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「いや、天狗なら飛べるんじゃないかと思ったんだけど、頑張っても飛べなくて」
「飛んでどこかに行きたいのかい? あんたいい乗り物持ってるじゃないか」
華京院は笑いをこらえているようだ。
「いや、そうじゃなくて……」
賢治は昨日聞いた陽菜の悩みを少しだけ話した後、自分のアイデアを伝えた。
「なるほどね。傷心のお嬢ちゃんに協力しようって訳か。あんたの気持ちはわかるけど、残念ながらあんたは天狗に見えてるだけで天狗じゃない。まがいもんだ。本物の天狗だって飛ぶにはえらく修業がいるってぇのに、あんたが飛べるわけない」
「……ですよね」
やはり甘かったか。この世界もけっこうシビアに出来ているらしい。
賢治は2人に頭を下げ、早々に立ち去ろうとした。陽菜もそろそろ学校に着く頃だ。
「ちょっと待ちな。これを使うといい」
賢治が振り向くと、華京院はピンポン玉より一回り小さな水晶玉をひとつ、差し出して来た。
「これは?」
「まじないを込めてある。あんたは飛べないが、しもべを使うくらいはできる。あんたに使いこなす力量があればね」
華京院はその玉の使い方を手短に教えると、賢治に手渡した。
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