HOME ~この空の下で~

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 恐る恐る覗いてみると、30くらいある席に、明らかに人間でない深緑の肌をした生徒が2人と、灰色の肌をして、耳たぶのでかい5等身の物の怪が、最前列に座っていた。ガラッパと田の神だ。白狐は居ないらしい。  そういえば田の神には老若男女いるらしい。米の豊作を願う人々の願いが作り上げた神だと言うだけあって、体型もファッションも様々だ。温和な顔で、ガラッパのような怖さは感じなかった。  いや、そんな事より問題は陽菜だ。教室の後ろの方で女子4人に囲まれ、追い詰められた猫さながらに表情をこわばらせ、立ちつくしていた。 「昨日はなんであのまま帰っちゃったの? 西島のドローンは陽菜のせいで水没しちゃうし、撮影は進まないし。3日後の上映会に持ち込めなかったら、Bグループは陽菜のせいで棄権になっちゃうのよ? 知らん顔で帰るって、どういうつもりなの?」  腕組みして陽菜ににじり寄っている子が沙也加なのだろう。確かに顔立ちはきれいで、自分の発言を微塵も疑うことない自信に満ちていて、象徴するように真っ直ぐストレートのボブカットがつやつやと光っている。  早くもヒリヒリと張りつめた空気になっている教室を覗き見ながら、賢治は止めに入るタイミングを伺っていた。
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