HOME ~この空の下で~

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「昨日は黙って帰って悪かったと思ってる。西島君にも、謝らなきゃと思って、今日来たの」  陽菜は顔を背けることなく真っ直ぐ答える。  その姿は沙也加とは別の意味で凛としていて、賢治は自分が飛び込んで行くことが無粋に思えた。もう少し様子を見ようと、教室の後方の戸の影に隠れた。 「なんで西島にだけ? Bグループのみんなが迷惑を被ったのよ。昨日はみんなクラブ活動休んで、先輩に睨まれながら時間作って遺構まで行ったのに。西島のドローンを弁償するだけじゃ足りないわ。一人づつに謝りなさいよ」  あまりにムカつく言い草に、思わず柱から頭を覗かすと、瞬時に気配を察知した陽菜が、目だけで「来ないで」と訴えて来た。無言の気迫に、賢治は再び身を隠す。 「それに陽菜、弁償できるの? あの機体結構高かったと思うのよ。ね? そうでしょ、西島君」  沙也加の取り巻きらしい一人が、尖った顎をクイと教室の中央に向けた。他の取り巻きたちも、不思議な事に皆同じような、冷たい笑みを浮かべている。  ガラッパたちはもとより、他の生徒達は耳を澄ませながらも皆知らん顔だ。  教室の中程に座っていた背の高い男子生徒が、ゆっくり振り返る。これが陽菜の好きになった西島なのだろう。すっきりとした切れ長の目の、男から見てもかなりのイケメンだ。  だが陽菜は外見に騙されているのかもしれない。ここは自分が見極めてやる、と、まるで兄にでもなった気持ちで賢治はその流れを見守った。 「もういいよ、あれは俺が操作ミスったからいけなかったんで、小宮のせいじゃないし」  男前な事言うじゃないか。賢治は一瞬で西島を見直した。けれどそれは沙也加の反感を買ったらしかった。
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