HOME ~この空の下で~

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 皆に交じって席に着きながら賢治は斜め後ろを振り返り、おれやっぱり天狗みたいだ、と心の中で陽菜に笑って見せた。さっさと入って行って助けてやれなかった後悔も入り混じり、何となく間抜けな空気感が漂う。  陽菜は普段通りの穏やかな顔で賢治を見、口の端でキュッと笑ってくれた。カラ元気かもしれないが、あの攻撃を受けても泣かないでくれたことに、賢治はホッとした。  そのまま1時間目の日本史の授業が始まり、配られたプリントを見つめながら賢治はなすすべもなく授業を受けた。高校の時は学校をさぼりがちでまともに授業に出ていなかったし、出ていてもほとんど寝ていたので、授業中何をやっていればいいのか分からなかった。  ようやく休み時間になっても、1人ポツンと座っている陽菜に話しかけることが良い事なのか分からず、賢治はじっと席に座ったままでいた。妙に天狗が話しかけたりなんかして、陽菜がウライサの人間でないとガラッパたちにばれるのは危険だった。  陽菜とは時々目を合わせたが、こっそり唇に指を当て、「話しかけないで」と伝えて来る。  陽菜を守るために学校に来たのに、なんとなく肩透かしを食らったようで、賢治はここでもまた自分の居場所を失くした気分だった。
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