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派手な音と共に声も上げずに男は階下まで転がり落ち、腕と首を奇妙な方向に曲げたまま、動かなくなった。
和美が甲高い悲鳴を上げたが、ひと睨みしただけで、賢治はそのまま階段を下り、うつぶせたままピクリとも動かない男を跨いで、その場から去った。
金なんてもうどうだってよかった。人ひとり殺した男にそんなものは要らない。そして、これから先の未来も必要なかった。
ただ、消えてなくなる場所を探していた。そんな願いも、贅沢なのだろうとは思うが。
「天狗さん、もうお昼ですよ」
肩を叩かれハッとして顔を上げると、陽菜が少し笑いながら賢治を見おろしていた。
時刻は12時45分。自分はいったい何時間机に突っ伏して寝ていたのだろう。周りを見渡すと生徒は半数ほどしかおらず、教室にいる生徒も好きな場所にかたまって弁当を広げていた。
西島は窓際で他の男子と喋っているが、沙也加や取り巻き女子はいない。ついでにガラッパも居ない。別の場所で昼飯だろうか。
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