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「走って行って焼きそばパンとサンドイッチゲットしました。飲み物はコーヒー牛乳でいいですよね? いつもはお弁当なんですけど、冷蔵庫の中身がアッチと微妙に違ってて、つくれなかったんで、今日は購買です」
にっこりと笑う陽菜の優しさが嬉しくて、賢治は泣きそうになる。
さっきまで見ていた殺伐とした夢の余韻が頭の隅に残っていたが、高校生活をもう一度体験しているようなこの目の前の現実は、奇妙に懐かしく、こそばゆく、そして新鮮だった。
「私がいつもお昼を食べてる場所があるんだけど行きますか? そこなら話もできますし」、と陽菜が言うので、賢治はもちろん頷いた。
陽菜のランチ特等席は体育館の裏だった。ちょうどよい木蔭と階段があって、落ち着ける。
「いつも一人で食ってんの?」
「そうです。なんか、グループに入り損ねて。そんなところもダメなんです」
「一人ってクールじゃん。俺もずっと学校じゃ一人だったし」
「同志ですね」
陽菜が焼きそばパンとコーヒーを賢治に差し出す。
「でも、天狗と仲良くしてて大丈夫かな、陽菜ちゃん」
さっそく礼を言って焼きそばパンにかぶりつくと、陽菜は笑った。
「たぶん大丈夫ですよ、さっき中庭で、イケメン白狐を取り囲んでお弁当食べていた女子たちがいましたから」
心なしか、昨日の陽菜よりも快活に見える。朝っぱらから沙也加たちにあんな責められ方をしたというのに、傷心の気配もない。やはり精いっぱいの空元気なのだろうか。
「さっきは助けてあげられなくてゴメン」
小声で言うと、陽菜は首を横に振った。
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