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一人ぼんやり遺構に見惚れていた賢治だが、その間にも生徒達はせっせと撮影準備を進めていた。
立ち直りが早いのか、沙也加は再び西島の傍にぴたりとくっつき、最新ドローンの使い方を逆にレクチャーしてもらっている。陽菜は他の女子と普通に混ざり、この映像に添える物語を再検討中だ。そのほかの男子はカメラの軌道や滞空時間を、ストップウォッチ片手に検討している。
日が暮れるまでに撮影を終えなければならないので皆、気合い十分だ。賢治も、手伝いこそできないが、わくわくして進行を見守った。
西島はメカに強いのだろう。西島がコントローラーを握るとすぐに、ドローンは軽やかに空中に浮かび上がった。ひときわ大きい沙也加の歓喜の声があたりに響く。黒光りする機体は遺構の上空まで登り、ホバリングした。
最新ドローンに対応したスマホを持っている生徒が居ないらしく、モニター確認はできないが、西島の操縦はとても安定感があった。
「やっぱ西島すごいなあ。ねえ、どうやったらこれ上昇するの? 前の機種より性能良い?」
「あ、ちょっ……コントローラーに触らないでくれ。ぶれるから」
西島は沙也加を適当に交わし、他のメンバーに「こっち方向で大丈夫?」と確認しながら撮影を続ける。
そんな西島を時折頬を染めながら見つめる陽菜を、賢治は可愛い奴だとまるで保護者のように見守った。
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