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「ひと通り撮れたと思うけど、回収してチェックする? SD見れるタブレット先生に借りて来たし」
「OK」
皆が了解したにもかかわらず、そこで沙也加はイレギュラーな提案を投げて来た。
「ねえ、せっかく水陸両用なんだから水中も撮ってみない? 上空からゆっくり着水して水中に視点を移すってなんだか神秘的じゃない?」
「いや、俺まだその操作練習してないし」
「大丈夫、私マニュアル読んだから。このまま下降させて……」
沙也加が西島の握ったコントローラーに手を伸ばす。
「あ、ちょっと待てって、分かった、着水するから」
慌てて西島はドローンを水面にゆっくり下降させて行った。誰もが固唾を飲んで見守る。あの姫に反論するよりも西島に任せた方がいいだろうという空気感が、賢治にまで伝わる。
微妙な沈黙の中、皆に見守られながら黒い機体は静かに水面に着水したが、そのコントローラーを沙也加が手に持った瞬間、悲劇は起こった。
突然水面に大きな波紋が広がり、その中心からざぶんと音を立てて何かが姿を現した。
「ガラッパだ!」
誰かが叫ぶ。
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