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湖と同じ色をしたガラッパが水面に浮かんだドロンをがっちりと掴んで、キョキョキョと大きく声を上げた。「面白いもの取ったぞー」とでも言うように、ドローンを手に持って振ってみる。誰もが呆気にとられる中、ガラッパはそのまま再び水の中に潜り、あっという間に姿を消してしまった。
「ガラッパ! 返しなさい!」
沙也加が拳を振り上げて叫ぶ。
「やられたな……」
西島がつぶやいた。
「今の……」
目を丸くした陽菜に、他の女子が苦笑しながら言った。
「川内川のガラッパは、うちのクラスの聴講ガラッパと違って、ちょい悪だから」
そうか、ちょい悪ガラッパなのか……。
とても残念な事が起こった後だというのに、賢治はなんとなく可笑しさが込み上げて来て、1人肩を震わせた。
けれど沙也加の怒りは収まらないらしい。みるみる顔が怒りで赤くなっていく。
「許せない! せっかく新しいのを調達したのに馬鹿ガラッパ。大体嫌いなのよあのひょろ長い河童!」
水面の波紋に向かって吐き捨てるように沙也加は叫んだ。
「ちょっと沙也加……、ガラッパの悪口は言わない方がいいよ。聞かれたら怖いよ」
沙也加の取り巻きの一人が静かに諫めたが、沙也加は頷きもせず、ダム湖にひとつ小石を蹴り入れる。
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