HOME ~この空の下で~

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「分かった、やってみる。私のスマホ、この世界の電波はキャッチしないけど録画機能は生きてるから!」  陽菜は水晶を握り締めると、来た道を戻ろうとするみんなの所に走って行った 『あんたに使いこなせる度量があるならね』  華京院はあの時そう言ったが、陽菜の手に渡ればもう心配いらないと、賢治は訳もなく思った。あの子ならやれる。自分に無い度量を、ちゃんと持っている。 「みんな、待って。まだ帰らないで。もうちょっとだけ時間をちょうだい」  展望台の端に立って水晶を天高く差し出した陽菜を、そこに居る全員が振り返った。  呆気に取られているが、誰も何も言わず、その小さなクラスメイトを見つめた。 「来たれ翼ある天空の使者よ。我に力を」   差し出した陽菜の右手がその呪文と同時に眩しい光を放って輝き出した。陽菜も見上げて驚いているが、その手を降ろすことはしなかった。  西島も沙也加もそのほかの皆も、何が起きるのか身動きせずに見守る。先ほど水面ギリギリを飛んでいたアオサギが、ばさりと大きく羽音を響かせて陽菜の方へ飛んでくるまでに、そんなに時間はかからなかった。  でかい! 普通のアオサギだと思っていたそれは、羽を広げると2メートルは軽く超すほどの怪鳥だった。
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