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アオサギが視界から消えると、みんなの悲鳴に似た歓声が沸き上がった。
「すげえ、いったい何の魔法だよおい」
「あの妖と友達だったの、陽菜。サギの妖なんて初めて見た」
「俺バカだ~。あの瞬間の動画撮っとくんだった。すっげぇ感動動画なのに!」
「ガラッパがドローン持ち逃げした動画は俺撮ったのに」
「あんたバカじゃない? そんなくだらないの消しなさい」
「小宮マジカッコよかった。お前巫女かなんかの血筋か?」
皆が興奮気味にはしゃぐ間も、陽菜は自分の手元に戻って来たスマホの画像がちゃんと映っているかどうかを真剣な表情で確認していた。
「良かった、すごくきれいに撮れてるよ、映像。これ、使えるよね」
陽菜はすぐそばに立っていた西島に、飛翔の動画の一部をそっと見せた。
西島は慎重にそれを受け取り、まるで初めて目にする宝石を眺めるように、ぐっと画面に見入った。
「これ……すごいよ小宮。おれ、鳥肌立った」
西島の言葉に他のみんなも画面に食いつく。その映像の美しさにどよめき、再び陽菜をほめたたえ、更には涙ぐむ女子までいた。
沙也加もさすがにその映像には魅入られてしまったようで、これでチャラね、と、彼女なりの感謝を陽菜に伝えて来た。
陽菜の照れたような笑顔が眩しい。
一連の出来事を、ただじっと見守っていた賢治だったが、自分がいつの間にか涙を流していたことに、しばらく気が付かなかった。
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