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「全部この水晶のお陰です。華京院さん、本当にありがとうございました」
陽菜は丁寧に頭を下げた後、小さな水晶をカウンター席に座る華京院に差し出した。
すぐにお礼を言いに行かなきゃ、と陽菜がせっつくので、遺構からみんなで再び学校に戻ってきたあと、賢治は陽菜をスクーターに乗せて、またこの喫茶星月夜を訪れたのだった。
カウンターにはいつものように華京院が座り、マスターが笑顔で「お帰り」と言ってくれた。その言葉に賢治はほっとする。
「役に立ってよかった。てっきり兄さんが使うのかと思ってたら、結局使ったのはお嬢ちゃんの方だったんだね。だがよかった。この兄さんじゃサギどころかセミ一匹飛んできてはくれまいて」
華京院が笑う。気にしないでね、とマスターが労ってくれたが、まったくその通りだと賢治は思った。
「陽菜ちゃんは、本当にすごかったです。あ、鳥を操った事もそうだけど、なんていうか、……凛々しかった」
「表現力が乏しいね。でもいいよ、ちゃんとわかる。その水晶はあたしの一部でもあるんだ。だから、あんたらの波動がちゃんと伝わって来てたよ」
「……そうなんですか? 華京院さんってすごい」
「その水晶はしばらく持っておくと良い。扉が開いたらすぐに教えてあげられるからね」
「え、連絡取れちゃうんですか、この玉で」
「そういうこと。一緒に帰りたけりゃ、お嬢ちゃんといつも一緒に居な、兄さん」
「あ……」
「はい、いつも賢治さんと一緒に居ます」
陽菜は賢治の手をギュっと握って笑った。
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