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もう一度神経を集中させて、前方にある2つ目のトンネルを見つめる。やはり見間違いでは無かった。陽射しを遮ったトンネルの中に、四角い半透明のプレートがはっきりと浮かび上がっているのだ。
通行止めの板なのだろうか。けれどさっき、老婆がここから抜けて来たし、立ち入り禁止の看板も無かった。
プレートは柔らかい膜のようでもあり、むこうがわを透かしながらも黄色く発光し、トンネルを遮るように直立している。
『今日は扉が開いてるよ。気をつけな』
不意に、さっきの老婆の言葉が脳裏に蘇った。振り返ってみたが、もちろん老婆の姿はもうない。
「扉?」
眉根を寄せて再び前を向き、賢治は再びハッとする。透けたプレートの向こうからこちら側に歩いて来るセーラー服姿の少女が見えた。
少女は泣いているのか、うつむいた顔を何度も手で拭いながら、前方を見ることもせずに突き進んで来る。このままではあのプレートにぶち当たってしまう。
「危ない!」
賢治は叫んで思わず走り出した。
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