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「ショートムービーは間に合いそう?」
マスターが昨日と同じ特製ドリンク『星月夜』を陽菜に用意しながら訊いた。
微炭酸水にブルーのシロップを落として軽くステアし、星型に成型したクリスタルイエローの氷をシャランと浮かべて陽菜の前に置く。その動きのしなやかさを賢治は何となくどこかで見たような気がしたが、少し考えても思い出せなかった。
「はい、空撮はほとんど終わったので、あとは編集とBGMと物語のナレーションです。あと2日しか無くて、休み時間返上だけど、何とかなりそうです」
「そっか、よかったね」
「この水晶と大きなサギと、賢治さんのお陰です」
「え、俺、マジで何もしてないから。その辺の蝉と同じくらいに何もしてないから」
「傍でヤキモキしてくれました。それが一番うれしいんです」
陽菜は言葉通り本当に嬉しそうな表情を浮かべ、ブルーのドリンクを手に取った。
「天狗じゃなくて蝉になっても一緒だったね」
華京院が笑う。
「7日で死んじゃいますよ」
間髪入れずに賢治はツッコむ。自分が言ったセリフに胸の奥が少しざわついたが、気づかないふりをした。
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