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陽菜はどうやら昼休みを使って放送室に籠り、Bグループのメンバーと共に、映像のナレーションの録音をするようだった。
もう廊下には、顔なじみのBグループの数人が陽菜を待っている。たった1日で、皆の陽菜を見る目がかなり変わったのが分かった。沙也加も、あまり好意的ではないが、陽菜を蔑むような言動はしなくなった。
陽菜は、あれはぜんぶ水晶のお陰だよ、と笑うが、鳥の事だけではない。陽菜がこの2日で自分を奮い立たせているのは賢治にも伝わり、それが賢治の背筋をも伸ばしてくれていた。
「うん、行っておいで。頑張って」
ほっとしつつも、少しだけ寂しい微妙な気分で陽菜を見送ったあと、賢治は自分の席で総菜パンをじっと見た。今日はコロッケパンだった。口の水分を奪っていく奴だ。でも嫌いじゃない。などと思いながら袋を開けようとすると、裏側に小さくメモが張り付けてあった。
『今日はガラッパの様子が少し違います。』
陽菜の字だ。
ハッとして周囲を見渡すが、教室内にいた2匹のガラッパは普段と同じ様子で静かに本を読んでいる。このクラスのガラッパの事ではないのだろうか。
そっと廊下に出て2階から外を見ると、中庭には5、6匹のガラッパが居て、遠巻きに校舎の方を眺めながら、何かを囁き合っている。
確かに、昨日とは何となく違う気がした。他のクラスの聴講ガラッパならば校舎に入ればいいものを、なぜ外で様子を伺っているのだろう。
陽菜のことがバレたと決まったわけではないが、警戒するに越したことはない。賢治は昼食をとったあと、外のガラッパをさりげなく観察した。
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