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不意に英語教師が廊下に歩み寄り、ドアの所に来ていた別の教師と小声で言葉を交わした。
生徒たちが不思議そうに見つめる中、教師はこちらに向き直り、声を殺してそっと伝達する。
「昨日遺構で撮影をした生徒。全員そのままそっと教室を出て、1階奥の資料倉庫に入り、内側から鍵を掛けてください。慌てずにそっと。声を出さないで」
緊迫した教師の声に教室中がただ事ではないと、一瞬のうちに凍り付いた。けれど多くを説明している時間は無いらしい。心配げな表情から、何らかの罰則ではない事はうかがえる。
「行こう。みんなそっと立って」
西島が何かを理解したのか、声を殺して周囲のBグループメンバーに指示すると、8人全員がそっと席を立った。
やっぱり?
え、なんで?
まさか、あれ?
いいから早く行こう。気づかれちゃう。
囁く声が耳をかすめていく。とにかく指示通りにするしかなさそうだ。賢治は、自分と同じく事態が飲み込めていない陽菜を振り返ると、「行こう」と目配せした。
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