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「頭を低くして、外から気づかれないように」
賢治を含め、9人で廊下を進む間、西島ともう一人のメガネの男子生徒が小声で指示を出す。女子たちは、皆無言だ。こんなとき人一倍騒ぎそうな沙也加も、なぜか人一倍引きつった蒼い顔をして口を閉じ、ただ腰をかがめて歩いている。
校舎の外で、何かがうごめく気配と、時折キョキョキョと、鳥に似た声が聞こえる。ガラッパだ。賢治はなんとなく事態を把握して発汗した。自分たちは今、校舎の外を包囲しているガラッパたちから身を隠している最中なのだ。
「いったい何でガラッパが?」
階段を降りながら西島に近寄り賢治がそっと訊くと、天狗に話しかけられたことなど無かったのだろう西島はひどく驚いた顔をしたが、それでも端的に教えてくれた。
「昨日ダム湖でドローンを奪ったガラッパに、沙也加が罵声を浴びせたでしょう。ガラッパは悪口を言われると徒党を組んで仕返しに来るんです。たぶん沙也加が目当てなんだろうけど、あの場所に居た全員に腹を立ててるに違いないから、とにかく身を隠します」
賢治の傍で説明を聞いていた陽菜が、表情を硬くしたのが分かった。陽菜の事がバレたのではなかったが、事態は似たようなものだった。
西島を含む男子3人は手際よく倉庫の戸を開け、9人全員が入ったのを確認すると、すぐに鍵を掛けた。
一階のこの資料倉庫は、そう言う時のためのシェルターなのかもしれない。中は明り取りの小さな窓があるだけで、とても薄暗い。
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