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「私、やばいと思ったのよ、沙也加がガラッパに叫んだとき」
「私も思った。遠くて聞こえなかったかもしれないと思ったけど、やっぱりこうなっちゃったよ。ガラッパの悪口言ったら襲って来るって知ってるはずじゃない」
「なによ、そんな事言ったって仕方ないじゃない! 腹が立ったんだもん」
「おい女子騒ぐなよ、外に聞こえるって」
非難し合う女子を、男子が窘める。先ほどの満たされた連帯感が一変してしまい、陽菜が泣きそうな表情になるのが賢治は辛かった。
そっと西島と共にカーテンの隙間から外を見ると、赤い目をした30匹ほどのガラッパが、校舎のまわりをうろついていた。中には木の枝や大きな石を手にしている者もいる。ひやりとして慌ててカーテンを閉める。
「教室のガラッパと人相が違うな。」
賢治が言うと、「ガラッパにもいろんなのがいます。みんなが凶暴な訳じゃありません。聴講ガラッパみたいに、人に馴染もうとするガラッパたちとは、僕らはなるべく一緒に生きて行こうと思うんですけど」と、西島は静かに言った。
賢治は陽菜を思わず振り返る。
“西島、いい奴だな!” 無言で語ると、陽菜は泣き笑いのような顔をした。実際この状況が怖くて堪らないのだろう。
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