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陽菜を除く女子4人はやはり険悪なムードで、女子の友情関係の脆さをうっかり垣間見た気がして、賢治は別の意味で気が重かった。陽菜の居る“女子の世界”は、このウライサの危うさにも似て、結構大変なのだな、と。
いきなり庭に面した窓が、がたりと大きな音を立てた。
沙也加ともう一人の女子が堪えきれずキャーと声を漏らしてしまった。まずいと思ったがもう遅い。
一瞬の静寂の後、沢山の足音がヒタヒタと近づき、直後一斉に窓ガラスが外側から叩かれ始めた。
もう女子の悲鳴を止めることは出来ない。その悲鳴と共鳴するように、窓ガラスはさらに激しくたたかれ続け、ついにカーテンのむこうでバリンと枠のひとつが割れる音がした。
「手を貸して!」
西島の指示で男子2人は窓のそばにあった古い金属製ロッカーに飛びついた。賢治も慌てて加勢する。頑丈そうなロッカーはすんでのところで窓をがっちり塞ぎ、庭からの侵入者を防いだ。同時に部屋はいよいよ暗くなる。
それでも窓からの攻撃は止まない。いや、余計にガラッパたちの怒りを増幅させてしまったのかもしれない。ガンガンと硬い何かで叩く音は大きくなり、最悪な事に、入り口のドアの外からも、がりがりと引っかくような騒がしい音が聞こえ始めた。廊下にも何匹か侵入しているのだろう。
「退路も断たれたな」
メガネが低い声で言う。
「いや、そもそもなんで一階のこんな部屋が避難部屋なんだよ。窓、脆過ぎじゃん!」
賢治が思わず突っ込む。
「他に開いてる部屋が無かったんでしょう」
「だ、だとしてもさ、この状況で教師は何で助けに来ないんだよ」
「先生はみんな怖がりですし」
メガネの男子が賢治の問いに淡々と答える。
なんだここの危機管理の柔さは。俺らだって怖えよ! 叫びそうになったが女子の手前、賢治はぐっと我慢する。
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