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さりげなく賢治の傍に寄った陽菜が、ポケットの中からそれを取りだしてみると、光を放つ水晶から微かに華京院の声が聞こえた。
『声を出さずに聞きな。そっちは今大変な事になってるみたいだけど、同時にあんたら2人に朗報だ。扉が開きそうだよ』
陽菜が思わず口元を押さえる。賢治は周囲を見渡したが、その声や光に気づいている生徒は居なかった、見聞きできるのは2人だけのようだ。
「マジっすか、でも今ガラッパに襲われてて外に出れないです」
可能な限り賢治は小声で話す。幸か不幸が周囲はガラッパとの攻防戦の最中で、こちらに気づくものは居ない。
『知ってるよ。だがそんなもの他の奴に任せて逃げ出しておいで。場所はあんたらが入って来たのと同じ導水路の中だ。扉は気まぐれだから、この期を逃すと次にいつ開くか分かんないよ。賢治。それがどういう意味か分かってるよね』
「ここを他の子たちに任せるって、そんなことできないですよ。みんな食われちまいます」
『食われやしないよ、最悪尻小玉抜かれてちょっとの間、腑抜けになるだけさ』
「訳わかんないですよ、最悪が怖すぎます!」
『じゃ、いいんだね。急がないと閉じちまうよ』
「でもどうやって」
『陽菜にその玉を預けたのは陽菜がちゃんと使いこなせると思ったからだ。大丈夫、陽菜にはちゃんと力量がある。任せてみな』
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