HOME ~この空の下で~

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 こっちよ、と手招きしながら走る陽菜の後を、窓を突き破って入って来たガラッパたちが走って追いかけてくる。ガラッパの足は速かったが幸いな事に、やはり陽菜の持つ水晶を警戒しているらしく、昇降口を出て駐輪場の近くで立ち止まった時も、ガラッパは遠巻きからジワジワ詰め寄るだけで、すぐに飛びかかってくることは無かった。 「陽菜、何してんだよ、すぐスクーターに乗って! 逃げよう!」  賢治は立ち止まったまま動かない陽菜にそう叫んだが、陽菜は首を横に振り、水晶を持った手を高く空にかざした。 「来たれ翼ある天空の使者よ! 我に力を」  昨日遺構で唱えた呪文を陽菜は再び唱えた。その凛とした声に賢治はゾワッと鳥肌が立つ。  突如学校の裏山の木々が風もないのにざわめき、ゴマ粒のような黒い霞が矢のような速さでこちらに向かって来た。陽菜ににじり寄って来ていた30匹ほどのガラッパも、それに気づいて校舎の方へ隠れようと走り出した。すかさず陽菜の指示が飛ぶ。 「赤い目のガラッパたちを校舎に入れないで!」  陽菜が水晶で呼び寄せたものは裏山に住む無数のカラスだった。その中には鷲ほどもある大ガラスも1羽いて、他のカラス達を率いている。校舎に戻って行こうとしていたガラッパたちは、あっという間に黒い警備隊に取り囲まれた。
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