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「カラス、大ガラス、このガラッパを川に返して。そしてこの後もずっと、ガラッパがわるさを仕掛けて来ないように、学校を見張ってちょうだい!」
陽菜がもう一度叫ぶと、カラス達は大ガラスを先頭に、まるで海の波のように統率を取って飛び、けたたましい声をあげながら散り散りに走り回るガラッパたちを、校門の方に追いやって行った。
ガラッパたちもしばらくは抵抗したが、カラスたちにようやく観念したのか、手に持った棒切れや石を捨て、次々に門を走り出て行く。
いつかTVで観た優秀な牧羊犬みたいだと、賢治はその様子にあっけにとられた。
ほんの数分で暴徒ガラッパたちはすべて、校門の外へ消えて行ってしまった。役目を終えたカラス達も、口々に小さく鳴きながら、裏山に帰っていく。
「優秀だな、裏山のカラス」
満足げに頷く陽菜があまりにも眩しくて、賢治は言葉が出て来ない。
「陽菜」
声のした方を振り向くと、Bグループの面々が昇降口に立ってじっとこちらを見ていた。感極まって泣いている女子の中に沙也加も居た。
「小宮!」
西島の声が響く。
陽菜は一度手を上げたが、すぐに賢治に「スクーター出して!」と急がせた。
ヘルメットを渡しながら「お別れはいいの?」と陽菜に訊いてみる。
「お別れじゃないです、ちゃんとみんなの所に帰るんです」
「あ……」
賢治はひとつ頷き、陽菜がしっかり腰に捕まったのを確認するとフルスロットルで学校を飛び出した。
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