HOME ~この空の下で~

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 しばらく空き地を見つめた後、賢治は再び自分を奮い立たせて走り出した。決心は変わらない。もうブレない。きちんと罪を償うのだ。  そのまま寂しい一本道を無心で走った。余計な事は考えないようにした。この頭で考えたって、いまはきっと寂しいなどというしみったれた感情しか沸いて来ないのは分かっていた。自分にはそんなことを思う権利すらない。人を殺め、逃げ回っていたのだから。  視線を真っ直ぐ前に走らせると、遙か遠くに個人商店のような店舗が見えて来た。その店舗の前に停まっているのは、ミニパトカーだった。賢治の心臓がドクンと跳ねあがった。目的の場所が向こうからやってきた気がした。  賢治はそのミニパトカーの後ろにゆっくりとスクーターを停車させた。店に入るまでに、2度ばかり深呼吸する。  店の中はとても狭く、飲料水や菓子やパン、アイスクリームなどのショーケースの端に、レジのテーブルがあり、その周りの丸椅子に座って、3人ほどが楽しげに喋っていた。  2人の女性と警察官だ。レジ横で、エプロンを着けて座っている女性が店主だろう。もう1人の年配の婦人はこちらに背中を向けている。 
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