HOME ~この空の下で~

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「あ、4時のローカルニュース、そろそろ始まるよ。駐在さんも華京院さんもお兄さんも、よかったら一緒に観てやってくださいな。うちの息子のグループが1等取ったんですよ。学校から昼間連絡ありましてね。今、私も初めて見るんです」  突然店主ははしゃぎはじめ、小型テレビのディスプレイを抱えて持って来て、レジのテーブルにドンと置いた。もう仕事をするどころではないらしい。 「伊佐市のPRのためのショートムービーを市が学生から募集したんですよ。うちの学校の子らも制作して、今朝上映会と受賞発表だったんです」 「……それ」  賢治には勿論すぐにわかった。陽菜たちが一生懸命制作したムービーの結果発表が、今朝あったのだ。  陽菜たちのはどうだったのだろう。受賞したのはどこの学校だろうか。 「奥さんとこの息子って、二日前学校で蜂に暴れられた、大口の高校でしょう」  警官が言う。 「女子生徒の一人がスズメバチの巣つついたせいで、生徒8人がスズメバチに追われて倉庫に逃げ込んで」 「そうなんですよ、まさにあの中にうちの子が居ましてね。一人機転の利く女の子がうまい事スズメバチを外に誘導してくれて助かったんですけど。まさにそのグループなんですよ、今日受賞したのは。何か、この数日でえらく団結力が強まったみたいでね」  全身に鳥肌が立つのを止められなかった。賢治は店主のおばさんの顔をじっと見る。  メガネだ。Bグループのメガネの男子生徒とそっくりだった。  言葉もない賢治の横で、華京院が小さく笑った。 「ほら、兄さんも観なよ。大賞取った子らの作品が始まるよ」
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