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≪君の背中にはこんなにきれいな翼があるのに、それでもつらいの? 先輩天使が言う。
こんなのは飾り。誰にでもある。私に欲しいのは、私を受け入れてくれる世界。
じゃあ、逃げてもいいんだよ。先輩天使は笑った。
精いっぱいやってもだめなら、逃げてみたっていいよ。君の世界を見つけてきたらいい。チャンスをあげる、と≫
カメラの視界はもうすでに、モノローグの天使そのものだった。ゆったりと羽ばたくリズムと羽音。この映像を見ている誰もが、この心を痛めている天使と同化し、画面に映る俯瞰の景色を見つめていた。
≪眼下に見えるのはとても美しい世界だった。まるで子供の頃夢見た絵本の世界の城のようだ。
この美しい地で羽を休めよう。川の向こうには虹を纏う壮大な滝もある≫
遺構の周囲を、ゆったり翼を羽ばたかせて旋回し、時に戯れるように水面ギリギリを飛び、天使は解放された気持ちを隠しもせず、川内川を川上に向かって飛んでいく。
トンとジャンプするように新曽木大橋を飛び越え、やがて天使の視線は日本のナイアガラと呼称されるにふさわしい、壮大なる瀑布、曽木の滝上空に到達する。
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