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「……ほんっとうに馬鹿ですね。なんで、気付かないんですか?」
知り合いだっただろうか? と思って目を凝らす。そして僕は気付いた。彼女の喉元が隆起していることに。いや、語弊だ。この子、彼だ。
「え……? 男……!?」
「声が低いでしょう。なんで女だと思ってたんですか?」
「だってすごく綺麗だし、名前も『舞』って」
「舞孝臣。男ですよ私は」
女性にしか見えない容姿から零れるテノールボイス。高校生とは思えない丁寧な言葉遣いに、胸が跳ねた。
「ドキドキする……」
「はい?」
舞は僕を見下ろしながら首を傾げた。この人の色んな表情を、もっと見たい。
「ねぇ! 僕、君のこと好きだ!」
「……意味がわからないです」
蔑むような目だ。僕の言いたいことが通じていない。
「僕の恋人になってよ」
彼の目が点になった。
「……え……」
僕は舞の手を優しく包み込んだ。
「僕の初めてを君にあげる」
数秒後、「いりません」と言われた。
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