二章

2/10
49人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「……ほんっとうに馬鹿ですね。なんで、気付かないんですか?」 知り合いだっただろうか? と思って目を凝らす。そして僕は気付いた。彼女の喉元が隆起していることに。いや、語弊だ。この子、彼だ。 「え……? 男……!?」 「声が低いでしょう。なんで女だと思ってたんですか?」 「だってすごく綺麗だし、名前も『舞』って」 「舞孝臣(まいたかおみ)。男ですよ私は」 女性にしか見えない容姿から零れるテノールボイス。高校生とは思えない丁寧な言葉遣いに、胸が跳ねた。 「ドキドキする……」 「はい?」 舞は僕を見下ろしながら首を傾げた。この人の色んな表情を、もっと見たい。 「ねぇ! 僕、君のこと好きだ!」 「……意味がわからないです」 蔑むような目だ。僕の言いたいことが通じていない。 「僕の恋人になってよ」 彼の目が点になった。 「……え……」 僕は舞の手を優しく包み込んだ。 「僕の初めてを君にあげる」 数秒後、「いりません」と言われた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!