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早速三組の教室で、入り口近くにいた女の子に話しかけてみる。
「ねぇそこの君、舞っていう男の子がこのクラスにいるよね?」
「え……? う、うんっ!」
僕は女の子の両手を優しく握る。
「会わせてくれるかな」
女の子の顔はリンゴのように真っ赤に熟れた。
「はっはい! 今すぐに!」
彼女はすぐに舞の座る席に案内してくれた。舞は気難しそうな顔で文庫本を読んでいる。
化粧をしていないながらもまつ毛は長く、目元は涼しげで唇も紅い。僕と同じ中性的な美少年だ。自髪は明るめの焦げ茶色でサラサラの短髪が真っ直ぐ伸びている。
「ねぇ、何読んでんの?」
彼の机の前で話しかけると、舞が僕に視線を移して「げっ」とでも言いたげな顔をした。
「思った通り、素顔も綺麗じゃないか」
無邪気に笑いかけても舞は愛想笑い一つしない。
「何しに来たんですか? 貴女は」
「ちょっと談笑しに」
「私は本を読みたいんですけど」
私っていうのは元々の一人称らしい。
「まぁいいじゃん。後で読もうよ」
「……何故私にそう構うのですか?」
「言ったでしょ? 好きになったからだよ」
僕の言葉で女の子の悲鳴が教室に轟き、舞は迷惑そうに片耳を摘んだ。
「……その件についてはお断りしたはずですが」
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