二章

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「君は僕のことを知らないだろう? 知れば僕のことを好きになるはずだよ。僕も君のこと知りたいし」 大きなため息を吐いた後、舞は文庫本を閉じた。 「その自信はどこから出てくるのか……いいでしょう。何の話をしましょうか」 「まずは好きなタイプかな! どんな女の子が好き?」 「直球ですね」 「参考に聞いてみたいんだ」 「そうですね……」 舞が顎に手を当てる。その考える仕草が知的で色っぽい。 「女の子らしい人、ですかね。フリルやレース、スカートが似合って、奥ゆかしくて控えめな方にこの上なく惹かれますね」 思わず僕は男子のブレザーに身を包む自分の姿を見た。そして窓にぼんやり映る僕はどう見ても貴公子だ。 「それ、僕と真逆じゃないか」 「お気づきになりました?」 ようやく舞はニタリと微笑んだ。 「なるほど、これは厳しいな……」 「諦めますか?」 僕は首を横に振る。僕を侮らないで欲しい。 「まさか! 初恋の相手が君なら不足ないね! 絶対その口から『好きです』と言わせてあげるから覚悟しなよ」 その時舞は拍子が抜けたような顔をした。僕がニヤりとすると、彼は我に返ったのか眉間にシワを寄せた。 「……好きにしてごらんなさい」 当てつけのようなため息。それはゴングが鳴る音だった。
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