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「……なら、彼は最期に取り戻せたのかな。彼らの種族として、大切なものを……」
「死の淵にこそ希望はあり、か。皮肉なものだな。失敗している同胞を、魔力も魂も全部使いきって逃がしてやった奴だけが、本来の人間足りえた、と――いやぁ、連中の定義なんて、私は知らないけどね」
「終わりに抗って、叫んでる……他の世界の彼らがそうなら、僕たちが追っている『彼ら』は、僕という終わりに抗って生きているのかな」
「さぁてね。異世界に行ってまで生を求める連中だが、確かにそういう面があるってことは、認めるよ」
彼女の感想は、きっと他世界での彼らの在り方を見てきた故のものだろう。
僕たちの世界の彼ら。別の世界の――不死に到達しない、全く違う彼らでも。
共通して、変わらないものは、きっとあるのだと。
「……正直なところを言えば。先に別世界の住人が彼らに抵抗してくれていると、助かるんだけどね」
「それは奇跡みたいな確率だぞ? 人間ってのは学習するんだ。一度でも抵抗されたら、まずは徹底的に叩き潰してから世界を乗っ取るし。私たちがそれを滅ぼしても、次は抵抗されない手段を先に考案してる。私たちの世界だって、神々がいなけば、どうなっていたか分からない」
「改めて思うよ。神ってすごいよね」
「だからこそ神なのさ」
神々に対抗できる彼らや彼らの技術が凄いのか、どんなに発展させても対応できてしまった神々が凄いのか。
どちらにせよ、暴れ回られる世界にとっては、たまったものではないだろう。
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