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「術式展開完了、っと。よーしレギト、今回は派手に移動するぞ」
「え。ええと、それは……一体どんな意味が?」
「自己! 満足!」
「断言した……!?」
「私がやりたいと思っただけさ。っつーか、意味なんてどうでもいいんだよ! 後悔なくやり切れるなら、意味なんて無駄なんだからなぁ!!」
思い切り暴論を言い放ちながら、魔力の流れが加速する。
木でできた長杖の頭にはめられた鉱石が光り、魔術の行使が促されていく。
青い彼女も、魔力の高まりと同時に、その姿を本来のものへと変えていった。
「――さぁ行こうか勇者。世界を滅ぼす旅へ」
「ほどほどに、ね」
青い鱗と、銀翼を持った魔法使いに触れる。威容を誇る姿は、人間を模した此方の背丈など遥かに越えていた。けれど、それで彼女の何かが変わるわけでもない。
刹那、大地に展開された魔法陣と、天を覆っていた紋様が呼応し合う。――神秘が、この世に発現する。
金の光が視界を埋め尽くす。
天地を貫く光槍となった彼女の背に乗って、時空の先へ、先へと進んでいく。
「……派手に移動するって、こういうこと? 君、優しい所があったんだ」
「なぁに、竜のささやかな気遣いってやつさ。これからの世界が、日の光を知らずに生きるなんて、損なことだと思わないか?」
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