5人が本棚に入れています
本棚に追加
「毎度思うんだが、お前のその行動に意味はあるのか?」
「さぁ。それは僕にも分からない」
目の前に、適当に砕いた墓石を突き立てる。
魔王の部下たちのための、手製の墓所だ。死体ももう、残ってはいないけれど。
「……それでも。やっておきたい、と思うからやっているんだよ」
「自己満足?」
「かもね」
なにせ、彼らを殺したのは僕だ。敵だったものを、わざわざ供養する……なんて真似、普通の戦士だったらやらないだろう。
しかし、殺したことについて、微塵も後悔や反省はしない。そう決めている。
「ま、お前は勇者だし。世界も滅んだし。なんでもいいか」
「勇者要素、関係あるかな」
「あるだろー。だって魔王と勇者だぞ? そんな存在がいなけりゃ、世界だって滅ぼされる義理はなかった筈だろう?」
「…………それは、そうだね……」
勇者だから。魔王だから。
そんなことで世界一つを滅ぼすんだから、僕も魔王も、第三者からしてみれば、そう大きな違いはないだろう。
「そしてキーパーソンとなるのがこの私。金髪勇者の導き手、別世界への案内者、キリュア様だ」
「自分で言うんだ?」
「事実だしな!」
ニヤリ、と不敵な表情を浮かべる彼女。この魔法使い、絶対に楽しんでいる。
「君は、一回怒られた方がいいと思うよ」
「私をたしなめて何になる。竜に物を言っても無駄だぞ?」
「ああ、そういえばそうだったね……」
キリュアは、青髪を持つ人の形こそしているが、その正体はドラゴンである。
魔法を使って姿を変えているのだ。実に自由人。いや自由竜。
「――勇者レギト。魔法師キリュア。また貴様らか」
と。
不意に、第三者の声が耳に入った。
反射的に振り返る。すると、そこには両足を放り投げ、城の残骸に寄りかかった黒いローブの男性がいた。先ほどの衝突によるものだろう、その両腕は既にないが、此方を睨む鋭い眼光だけでも、気迫は十分にあった。
「おや。お前は……今期の参謀魔術師か?」
「私のことなど、どうでもいいだろう。問題は貴様ら二人だ――化物共め」
忌々しそうに、魔術師の男が言葉を放つ。
……いや、実際に僕たちのことは憎らしいだろう。当然だ。
最初のコメントを投稿しよう!