勇者

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「毎度思うんだが、お前のその行動に意味はあるのか?」 「さぁ。それは僕にも分からない」  目の前に、適当に砕いた墓石を突き立てる。  魔王の部下たちのための、手製の墓所だ。死体ももう、残ってはいないけれど。 「……それでも。やっておきたい、と思うからやっているんだよ」 「自己満足?」 「かもね」  なにせ、彼らを殺したのは僕だ。敵だったものを、わざわざ供養する……なんて真似、普通の戦士だったらやらないだろう。  しかし、殺したことについて、微塵も後悔や反省はしない。そう決めている。 「ま、お前は勇者だし。世界も滅んだし。なんでもいいか」 「勇者要素、関係あるかな」 「あるだろー。だって魔王と勇者だぞ? そんな存在がいなけりゃ、世界だって滅ぼされる義理はなかった筈だろう?」 「…………それは、そうだね……」  勇者だから。魔王だから。  そんなことで世界一つを滅ぼすんだから、僕も魔王も、第三者からしてみれば、そう大きな違いはないだろう。 「そしてキーパーソンとなるのがこの私。金髪勇者の導き手、別世界への案内者、キリュア様だ」 「自分で言うんだ?」 「事実だしな!」  ニヤリ、と不敵な表情を浮かべる彼女。この魔法使い、絶対に楽しんでいる。 「君は、一回怒られた方がいいと思うよ」 「私をたしなめて何になる。竜に物を言っても無駄だぞ?」 「ああ、そういえばそうだったね……」  キリュアは、青髪を持つ人の形こそしているが、その正体はドラゴンである。  魔法を使って姿を変えているのだ。実に自由人。いや自由竜。 「――勇者レギト。魔法師キリュア。また貴様らか」  と。  不意に、第三者の声が耳に入った。  反射的に振り返る。すると、そこには両足を放り投げ、城の残骸に寄りかかった黒いローブの男性がいた。先ほどの衝突によるものだろう、その両腕は既にないが、此方を睨む鋭い眼光だけでも、気迫は十分にあった。 「おや。お前は……今期の参謀魔術師か?」 「私のことなど、どうでもいいだろう。問題は貴様ら二人だ――化物共め」  忌々しそうに、魔術師の男が言葉を放つ。  ……いや、実際に僕たちのことは憎らしいだろう。当然だ。
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