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 なぜ旨いものは体に悪く、楽しいことは身を亡ぼすのか、と言った者がいた。旨いもの、楽しいことには毒のようなものがある、と言われればそうかとも思うが、それは甲子園の魔物のような比喩に違いあるまいとの直感もある。本当のところはどうであろうか。  そう考えて久しぶりに、学生のように集合で考えてみた。実に初歩的であった。   やらなければならないことで、かつ、ためになること   やらなくていいことで、かつ、ためになること   やらなければならないことで、かつ、ためにならないこと   やらなくていいことで、かつ、ためにならないこと  これらに日常の行動、野菜を食う、早く起きる、音楽を聴く、仕事をする、上司に付き合う、タバコを吸う、博奕をする、本を読む、といったものを振り分けてみる。すると「ためになることはやらなければならない」という理屈が頭に宿り、やらなくていいがためになることから行動を次々に引き抜いていくことが自覚できた。引き抜かれて残ったのは、異常な野菜好きや音楽好きである。集合の理論は我々に、人生がつまらないことを証明してくれているのではあるまいか。
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