148人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
「行ってらっしゃーい」と、泉と和香は小百合の背中に視線をおくり、りんは床に伏せたまま、尻尾だけ振って早百合の出勤を見送った。
「小百合お姉ちゃま、相変わらず忙しナイです」
見送る和香が苦笑する。
「ねえ、今朝の早百合ちゃんさあ、出かける前にちょっとニヤニヤしてなかった?」
泉が不思議なものを見たような顔で和香に問いかけた。
「ウチもそう思ったデス。お姉ちゃま、誰かいい人でモ出来たのかしラ?」
和香も少し首を傾いで、泉の顔を見た。
二人は顔を見合わせ、数瞬の間を置き、
「まさかねー」と声に出し、自分達の考えを否定した。
「和香ちゃん、ご飯が終わったら、りんにドッグフード食べさせてあげてね」
泉の言葉の意味を察し、りんと呼ばれた大型犬は自分に用意された餌皿の前に、ゆっくり歩いて移動し、お座りした。
和香がドッグフードのパッケージを開け、包みを傾けると、乾いた音とともに小さな洗面器ほどはある皿の中はフードで満たされた。
りんは和香と泉の顔を交互に見て、頭を下げると美味しそうに食べ始めた。
最初のコメントを投稿しよう!