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〇三姉妹
「きゃあ!!遅刻しちゃいますわ!!」
175センチを超える長身の早百合は、投げ捨てるようにパジャマを脱ぎ、カーキ色の作業服に袖を通し、腰まである黒髪をきゅっと結び、太い黒縁の眼鏡をかけた。
毎朝の事であるが、メイクにかける時間は7分きっかり。
部屋のドアを開け、勢いよくリビングに通じる階段を駆け降りると、対面式のキッチンで姉の泉が朝食を作っていた。
早百合よりも幾分か背は低いが、身長165センチは超えているであろう。
青いストライプの綿のシャツの上から、生成りのエプロンをつけている。
テーブルには既に、ふたりよりもずいぶん小柄である妹の和香が席についている。
泉は手際よくフライパンで焼いていたベーコンエッグを皿に移し、トースターからきつね色に焼けた厚切りのパンを引き抜き、駆け込むように座った早百合の前に置いた。
食卓にはレタスをベースにして、プチトマトと薄く切られた赤いラディッシュがのった大盛りのサラダの横に、タールのように濃いコーヒーが、透明な耐熱ガラスのコーヒーポットの中で湯気を上げていた。
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