〇日常

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〇日常

 和香は、泉達が出勤したあと洗濯機から洗い終わった衣服を分別して大きな乾燥機に放り込み、りんを連れて散歩に出かけるのが日課だ。  強度の日光アレルギーである和香は、海賊が(かぶ)るような(つば)の広い黒い帽子に、ゴスロリ調の長袖の服を着て、りんを散歩させる。  伊佐市の中央部にある姉妹の家は、東・南・西の三方を田園に囲まれ、北側に丘を背負っていた。  田園地帯の中を格子状に走る農道を、大きな黒い帽子の両方の(つば)を手で持ちながら、てくてく歩く黒い服の少女と、少し乾いた秋の風に、カスタードクリームのような長い毛を揺らしリズム良く歩くゴールデンレトリバーが、不思議と風景に調和していた。  二分も歩かないうちに、農家の庭先の低い塀ブロックに腰かけている、もんぺを着て白い頬被りをした老婆がにっこり笑って二人に声をかける。  「あら、和香(のどか)ちゃん、今日もお散歩?」  「そうだよー。りんと一緒に散歩。あ、そうそう、息子さんは東京から帰って来たカナ?」  立ち止まった和香は、帽子の(つば)を指で(つま)んだまま答える。りんはその後ろで、二人の顔を見上げながら、ゆっくりと尻尾を振っていた。     
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