きっかけは突然に

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きっかけは突然に

 私、兔丸(とまる)ヤナエ高校1年生は調理室でひとりため息をついていた。 卵、牛乳、食パンなど部費で調達した材料と包丁やまな板といった調理器具を机に並べ、いかにもこれから料理を始めますというシチュエーションなのだがいっこうに重い腰があがらない。エプロンすら付ける気力がない。 「思ってたのとちがぁぁぁぁぁぁう」 私の悲壮な叫びが放課後の天井に空しく消えて行く。 今は部活の真っ最中で私は家庭科部の部員だ。 家庭科部の活動内容は主に料理で、お菓子を中心に食べたいものを自由に作って食べてレポートを顧問に提出している。 部員数は私を含めて7人。内2人は3年生でこの夏に引退してしまい、残るは2年生の先輩3人と、私と親友のマミが織り成す1年生コンビの合わせて5人なのだが───このところ私以外の部員たちは、かけもちの他の部活がメインになってしまったり不登校が続いていたりもう何ヵ月も停学になっていたりヘルニアで入院してしまったりとそれぞれの事情が重なり家庭科部を欠席しており、私一人で活動をする日がしばらく続いてしまっている。 もともと活動頻度は週に3回程度で、内容も好きに料理をするだけで、朝練も大会もなく、ここ県立野原(のはら)高校の中ではダントツにユルい部活なのだが。     
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