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彼女は2、3歩、いつも帰っていく方向に歩いたところで振り返った。
「ねぇ。もし、またこっちに戻ってくるようなことがあったら。その時はここに来てもいいかな?」
「あぁ、大歓迎だよ。待ってる、ずっと」
そう言って瞬きをしたその瞬間、僕の目から一筋の水滴が零れた。やはり彼女といると調子が狂うな。
「大丈夫?」
「大丈夫だ。それより良いのか?帰らなくて」
本当はもっと一緒にいたいのに、それを口にしないところだけは僕らしいと言える。
「そうだね。じゃあ・・・また今度」
「じゃあ、また」
僕がそう言い終える前に彼女の姿は消えていた。
帰ったんだ。そしてもう二度と会えないかもしれない。
そう思うと、目から落ちてくる水滴の数はどんどん多くなって終いには持っていたスケッチブックを砂浜に置き、膝を抱えて泣き出してしまった。きっと、さっきの彼女もこんな気持ちだったんだろう。
これはいつか止まるものなのだろうか。いや、何とか止めなきゃいけないな。
彼女とまた会える日までに。
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