彼女とまた会える日までに

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「お前知ってるか?そういえばあの噂の絵、別の美術館に移動するらしいぜ」  閉館後、照明の落ちた暗い美術館を巡回していた中年の警備員が隣を歩く同じ歳くらいの同業者に話しかけた。館内が静まり返っているせいか足音が反響してよく聞こえる。 「おう、知ってる知ってる。あの向日葵畑の真ん中に立つ少女の絵だろ?夜な夜な少女が絵から消失するっていう噂の」 「そうそう。んでその消えた少女は隣に飾ってある絵に写ってるんだよな。隣の絵は・・・確か浜辺で佇む少年の絵だっけか」 「俺らはこれまで日勤だったから関係なかったけど夜勤をしてた奴らは、その少女は少年の隣にずっと立ってるのを毎日のように見てたらしいぜ」 「そうか。だから俺らよりも日当がいい割に辞めていく奴が多かったんだな。で?そっから先はどうなるんだ?」 「それが特に何もねぇらしい。朝を迎えるまでずっとそのままで日が昇る頃になると、いつの間にか元に戻ってるっていう話だ」 「なんだつまんねぇの。もっと、それを見た奴が呪われた~とかそういった類の噂が聞きたかったんだが」 「お前そういう話好きだよなぁ~。じゃあ今から見に行くか?丁度その絵が展示されてるエリアの近くだし」「おう、見に行こうぜ!」 こうして2人は例の絵が飾られてある方向へ足を向けたのであった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「おい・・・」 「・・・なんだ」  先程まで楽しそうにしていた警備員2人は驚きのあまり口をポカンと開けていた。視線の先にあるのは少女の絵。 「この絵の少女って笑ってたよな?」 「あぁ。確か」 結果的に言うと少女が隣の絵に移動してる、なんて事はなかった。なかったのだが。 「じゃあ、なんで泣いてんだよ・・・」 昼間は笑っていたはずの少女が顔を歪めて泣いていた。とても悲しそうな表情で。  翌日、それを見た2人は美術館の警備を辞めていき、その話が他の人に語られることは二度となかったという。
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