コケシと美青年

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身長は180センチ近くあるだろうか。スラリと通った鼻筋に、白い肌。金色に近い明るい茶髪の隙間から、父親似の優しい目がのぞいている。 クラスの一軍女子が騒ぎそうな、絵に描いたような美青年がそこにいた。 「ここに座って、ご挨拶しなさい」 美青年は父親の横に座った。 「息子の、慶一郎(けいいちろう)です。遅くなって申し訳ありません」 「いや、そんなの、全然気にしなくていいのよ~!」 お母さんは何故か頬を赤らめていた。 「早速だけど、実は、みんなで暮らそうと思ってるんだ。いいかな?」 やっぱりか、と思った。 「予想はしてましたので」 私がそう言うと、総二さんは声を出して笑った。 「君は、ほんとにしっかりしているね。前評判通りだ」 褒められたので、愛想笑いで返す。 ただ、連れ子がいるパターンは初めてだった。 ずっと独りだったので、不思議。というか嫌悪感だった。共働きで両親は家を空けることが多かったので、家は私の城だったのに。 血も繋がらない『きょうだい』ってどうなんだろう?ドラマみたいな話だな、なんてぐるぐる考えていると、総二さんが言った。 「籍はまだ入れないつもりなんだ」 ーーーん? 「…再婚するわけでは無いんですか?」 よくよく聞くと、総二さんも、いくつかバツは付いているけど、連れ子が居るのはお互い初めてらしい。 私や美青年のことも考えて、籍を入れずに暮らしてみて、問題なければゆくゆく入籍するつもりだと。 「その方が、君たちも良いだろう?」 「…」 正直、どうなんだろうか。どっちにしろ私のテリトリーが侵されることに違いは無い。 「俺は、父さんと艶子(つやこ)さんがしたいようにしたら良いと思うよ」 美青年がそう言うと、私の返事を待つように、2人が私を見た。 私は小さく頷いておいた。
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