コケシと美青年

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その週末は、引越し作業に明け暮れていた。 総二さんの家は、私の高校の校区内にあって、むしろ今の家より近くなるから好都合だった。ずっと賃貸暮らしだった私としては、一軒家での暮らしには少し憧れがあった。 またここに、私の世界を作ろう。 私の部屋は二階だった。主寝室が1つと、他に寝室が2つ。美青年が1つ使ってるので、私はその隣。8畳くらいで、今まで住んだ家で1番広い部屋だった。 片付けをしていると、あっという間に夕方になっていた。 「出前取ったから食べましょう~!」 リビングからお母さんの声がしたので、片付けを中断して廊下に出た。すると、美青年も部屋から出てきたところだった。 「お前さ、」 突然声をかけられ、ビクッと肩が跳ねる。同世代の男性に、全く免疫が無い。 それに気付いたのか、クスッと笑われた気がした。 「名前、なんだっけ?」 「…んこ」 「なに?うんこ?」 「り!ん!こ!」 こんな綺麗な顔から思いがけないワードが飛び出て、驚きを隠せなかった。この前の食事会の時、この人、こんなキャラだったっけ? 私の戸惑いは他所に、美青年はゲラゲラ笑っていた。
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