2227人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
ドラキュラ王子
文化祭当日。朝早くの実行委員の集まりを終えて、教室に行くと、一軍女子が駆け寄って来た。黒やピンク、水色などの色とりどりのメイド服に身を包んでいる。太ももまでのヒラヒラのスカートは、目が大きくて肌が白く、細身の彼女たちにはよく似合っていた。
「濱岡さんにも、ピッタリの衣装があるから!」
そう言って押し付けられたのは、赤色の浴衣だった。
「絶対似合うと思うから!ね?」
クラスの何人かは、既に笑いが堪えられなくなっていた。
ハイハイ、まさにコケシになれってことですね。
私は無言でそれを受け取って、着替え用に作ったバリケードの中に入った。浴衣の着付けは、水商売の母親の教えのお陰で会得していたので、自分ですんなりと着ることができた。
私がそれを着て登場すると、本当に着るとは思っていなかったのか、ほとんどのクラスメイトが絶句していた。
どうせ着付けも出来ないだろうと思っていたようだ。
内心、ざまあみろと得意気になった。
最初のコメントを投稿しよう!