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僕はある場所へと呼び出された。
見つめた先には、ありえない光景が目に入る。
「あーあ。本当に学校って、二人で会えないよな」
「同性愛って、公に出来ないから不便だよね」
学校の理科室に、僕の友達の二人が居た。
扉の隙間から二人を見つめる僕は、その場に呼ばれていない。
此処に居てはいけない存在だ。
理科室に呼び出したのは、学年が下の女子。
「勇二、ウチ、見つけてしまったんよ」
学年は一つ下だが、幼い頃から一緒に過ごしていたので、学校でも呼び捨てだ。
真夏はショートカットで、目は少しつり上がり気味の活発な女の子。
僕の友人も、勿論知っている。
「英輝(ひでき)くんと敬冶(けいじ)くんの、密会現場よ。どうすればいいん?」
困った顔で真夏は笑う。
「見なかった事にしよう。ほら寮へ帰ろう。送って行くから」
二人の関係に踏み込みたくなかったので、僕は離れようと促した
僕は二人に気付かれない様に真夏の手を引く。
「……秘密だよ。この事は誰にも言わないで」
僕は念のために真夏に口止めをする。
意図を理解したみたいで、真夏は困った様に頷いた。
理科室から離れようとした時、野良猫がバケツをひっくり返す。
慌てて僕達は掃除用具入れに隠れた。
「だ、誰!?」
英輝の一拍遅れた声が廊下に響く。
僕と真夏は掃除用具入れの中で、息を殺した。
幸い、二人には気付かれなかった。
二人が教室に戻った音を聞き、僕達は外に出る。
僕は掃除用具入れの中で、右手をケガしてしまった。
しかし、真夏には知られたくない。
心配させたくなかったから。
怪我をして、赤みを帯びて行く前に、真夏を無事に寮へ送り届けた。
どうにか真夏には、僕の傷は気付かれなかった。
「おやすみ、真夏」
「おやすみ、勇二」
僕は真夏を寮まで見送ると、保健室へと向かう。
治療を終えて寮へと戻ると、理科室にいた友人が戻ってきていた。
密会の後でも何事もなく、普段と変わらない二人。
でも僕の手には包帯が巻かれていた。
「勇二、その包帯どうしたんだ?」
僕の手の包帯を見て、敬冶は顔をしかめる。
「ちょっと、ケガをしただけだよ。大ケガではないから大丈夫!」
僕は明るく笑って手を振り、元気さを示す。
三人で部屋に向かい、二人とは別の部屋なので、そこで分かれた。
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