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これはいかにも科学者らしい発見だ、夏休みが終わったら誰かに話してみよう。仕方のないことに一日を費やしてしまった。散らかった頭が片付いたところで、この散らかった部屋の掃除でもしようと、カーテンを開けた。 その瞬間、窓の外に見えた大きな大きな雲、東の方に尾鰭を引きずり、西に向かって流れる雲と、目が合ってしまった。 突然のことだった、ついさっきまでは、心のどこかで空想上の出来事だと軽んじていた。こんなものを見る日は来ないと思っていたが、こんなにも簡単に目の前に現れた。果てしない群青の空を泳ぎに来た、巨大な真っ白の『くじら』が通りすがりに僕を見下ろした。 ハートの形をした心臓の役割を果たすパーツが、ウッと生々しい音を立てた。無いはずの血液が一瞬にして煮立ち、体の表面がぞわぞわとした。ある特定の条件下でしか発生しない目から塩水が溢れてくる身体動作が発生した。 あらかじめ決められた大きさの箱の中でカタカタと機械的に動いていた思考の奥を、深く深く、実寸とは比にならない、別次元のどこか光すら差さない痛い場所を、深く抉られた。その時確かに、立ち竦み、今にも夕陽の中に消えそうな、弱々しい自分の姿が見えた。初めて生きていることを実感した。 死を感じたからだ。 ぼやけた目をこすると、強い風に流されて巨大な雲は散っていった。晩夏の強風が部屋の床を拭き荒んでいった。汗も涙も一切の制御が効かず、手足は不自然に震えていた。両の足が確かに地面についていて、自分の体の重さをいま初めて知った。そして、今は最早その重さに耐えられなくなっている事実を、混乱する心臓の鼓動が、嫌というほど脳裏に刻み込み始めた。
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