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それから数時間後、日が沈み、辺りはすっかり暗くなっていた。
「ふぅ、いっぱい買ったね!ありがとー、なっくん」
「……あ、ああ」
沢山の画材の入った袋を両手に下げ、嬉しそうにスキップするレオンと、巾着袋の中身を呆然と見つめるナポレオン。ナポレオンは大きなため息をついた。
(レオンのために金を使った俺がバカだった……!金はたくさん持ってきてるからいいが、あいつにはしばらく何も買わないようにしよう)
こんなにレオンが金遣いの荒い人だとは予想外だった。しかし、ナポレオンは喜んでいるレオンを見て、今日くらいはいいかと思うことにした。
「さて、宿取って、飯でも食いに行くか!」
「すみません」
ガヤガヤとした騒がしさの中、市場を抜けた所にある宿泊施設に向かおうとする二人の耳に声が届いた。後ろを振り向くと、そこには身長百七十センチ程の白いローブを深く被った人物が立っていた。顔はフードの関係で見えないが、声色的に女であることは分かる。ナポレオンは腰に下げている剣に手を添えて、いつもより真面目な声で女に質問する。
「何だ?」
「……失礼ですが、アラヴェスタから来た冒険者さま、ですか?」
怪しいとは思いながらも、ナポレオンはこくりと頷く。
「そうだが……。お前、誰だ?」
「ああ、フードを被ったままでしたね。失礼しました。あまり目立ちたくなかったもので」
女がフードをはずすと、金髪の端麗な顔が現れた。
「私はジャンヌ・ダルクといいます」
ジャンヌ・ダルク、十八歳。彼女は神に選ばれし者であり、首から下げている十字架のペンダントは彼女の信仰心の証だ。女騎士というのはこの世界ではかなり珍しい存在であるにもかかわらず、ジャンヌは男性並み、いやそれ以上の武術、剣術が扱える優れた騎士なのだ。そして、彼女はユスティニアヌス卿の直属の軍隊・ルーシュの第一部隊隊長を務めている。
そんなジャンヌの噂は当然アラヴェスタにも届いていた。
「へぇ、アンタが有名な女騎士か。で、そんな人が俺たちに何の用だ?」
「ここでは目立ちます。私の家にご案内します、付いてきてください」
ジャンヌに言われて、ナポレオンたちは彼女のあとを追う。すると、辿り着いたのは町外れにある大きな教会だった。中の明かりでキラキラと輝く美しいステンドグラス、繊細に彫刻された聖母や天使の像。ユスティール内唯一の教会、クラン聖堂である。
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