第2話 女騎士

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「『聖女の涙』?」  ナポレオンはジャンヌに聞き返す。すると、ジャンヌは語り始めた。 「ここから数百キロ離れたユーテルシア大陸にある宝玉です。話すと長くなりますが、話さなければ理解していただけないと思うので、どうして宝玉を手に入れたいか、全てをお話します」  とりあえず食堂にご案内します、話はそこで、とジャンヌが連れてきた食堂で適当に座って、二人は彼女に向き合った。ジャンヌは一つ深呼吸をしてから、口を開いた。 「私は聖女の涙の話を司教様から聞きました」  それはジャンヌが物心つく頃からおとぎ話のような感覚で語られた。 『聖女の涙は君のような心が清く美しい人を主人として認めるんだ。そして、一つだけどんな願いも叶えてくれる』 『そのたま、しゃべるの?にんげんみたい』 『力がある宝玉は意志を持ってるんだ。聖女の涙もそういう宝玉のひとつだ』  小さいながらもジャンヌは、おとぎ話にしてはとても現実じみた話であると感じていた。しかし、司教に直接確認するまでは気にしていなかったので、司教が語る「意志のある宝玉の話」として認識していた。 「でも、あの日、おとぎ話が事実になったんです」  ジャンヌが悲しげにそう言った。その表情を見て、ナポレオンは優しい声色で尋ねた。 「あの日?」 「司教様が亡くなった日です。あの日、聖女の涙に関することを全て私に語って亡くなりました。知っていたことも含めて、ね」  司教が息を引き取る数時間前、ジャンヌの手を握り、弱々しく(かす)れた声で語った。 『ジャンヌ、聖女の涙を取り返してきてはくれないか?』 『司教様?何を言っているのですか?あれはおとぎ話では……』 『本当にあるんだ。今は別の場所にあるが、元々はここにあったんだ』  ジャンヌが司教の話を聞かせると、レオンは驚きの声をあげた。 「え、その宝玉、ここにあったの?」 「はい。司教様はそう言っていました。そして、聖女の涙はエルフ族のものだったと」  この世界には、人間族、エルフ族、巨人族、魔族、妖精族の五種族が存在する。世界の大半は人間族が占めているため、他種族は人間族とは離れた島や大陸に住んでいる。中には人間と共存しているものもいるが、その数はかなり少ない。  ジャンヌ、いや司教は聖女の涙がエルフ族の手から人間族のものになったと言ったのだ。でも、とレオンは頭に疑問を浮かべながら発言する。
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