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「エルフ族ってブリタン族以外は人間族と共存してるんだよ?」
「それなら考えられるのはひとつしかねぇだろ。聖女の涙はブリタン族のもんだった」
ナポレオンは真剣な表情で答えて、ジャンヌに続きを話すように促した。それを応えるようにジャンヌは語り始めた。
「実は司教様はブリタン族で、この地も元々は彼らのものだったと言っていました。司教様はこの地が好きで、人間との共存を選びここに一人残ったそうですが、どうしても聖女の涙のことが気がかりだったそうです」
そこまで話を聞いて、ナポレオンはジャンヌが聖女の涙を求める理由が分かってしまった。
「つまり、お前は司教の遺言のために、聖女の涙を取り戻したいってことか」
「はい。話が早くて助かります」
「よし、分かった。手伝ってやる」
「な、なっくん!?即決!?」
ナポレオンの発言にレオンは反論する。
「そんな簡単に決めていいの?ちゃんと考え……」
「大丈夫だよ、俺が何にも考えてない訳ないだろー?……ジャンヌ、聖女の涙を取り返してきた後も俺たちと旅をする気は?」
意地の悪い笑みを浮かべるナポレオンにジャンヌは笑って返す。
「ふっ、どうせルーシュ退団してきた身ですので、聖女の涙を取り返した後は無職です。あなた方の旅地に同行しましょう」
ルーシュ退団は流石に予想外で、ナポレオンたちは目を丸くしたが、それも一瞬のことで彼女に笑い返す。
「よし!じゃあ、よろしくな、ジャンヌ」
「はい、よろしくお願いします」
「で、聖女の涙の手がかりはあるのか?」
「ユーテルシア大陸にあるということだけですが、もう一つ話しておきたいことが」
そう話すジャンヌに二人は真剣な表情で耳を傾ける。
「実は聖女の涙を守っている聖女がいるというのですが、心当たりがあって……。皆さん、聖女といえば誰を思い浮かべますか?」
「聖女だったら、マザーテレサじゃない?」
「ああ、俺もだ」
二人の解答を聞いてジャンヌはやはりと呟いた。
マザーテレサ、信徒に最も信頼されているシスターである。彼女はどの種族にも手を差し伸べ、救いと祈りを捧げてきた。その働きは全世界に知られるほどに偉大であり、彼女を知らない者はいないという。
「おい、まさか、聖女の涙を守ってるのがマザーテレサとか言わないよな?」
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