5人が本棚に入れています
本棚に追加
第3話 作戦会議
まだ辺りが明るくなってきたばかりの時間帯、ナポレオンは既に起床し、剣を持って、外に出ていた。
剣の素振り千回は彼の毎朝の習慣である。
天才と思われがちなナポレオンだが、彼は秀才である。誰よりも負けず嫌いで、努力家で、自分の目標をいつでも持ち、それを達成する。しかし、それを知る者がいないのは、彼が自慢げに話したりしないからであろう。自慢げに話すような奴であったなら、きっとアラヴェスタで歩き回って、街の人達によく思われない王子となっているだろう。しかし、ナポレオン自身は自己の評価に対してこだわりも何もないのだからよいのかもしれない。
ナポレオンは一人剣を振りながら考えていた。マザーテレサのこと、ジャンヌのこと、エルフ族のこと。そして、聖女の涙のこと。
(初めての冒険にしては重かったか?でも、その宝玉、書物で読んだことがあるんだよなー。『一つだけどんな願いも叶えてくれる』か…。手に入れるには作戦もしっかり立てとかねぇとなんねぇし、戦闘も避けられないなら鍛えなきゃなんねぇし…)
やることが多すぎる、とため息をつきながら素振りをしていたら、突然後ろから声をかけられた。
「おはようございます」「うわぁぁあ!!!?」
ナポレオンは驚きのあまり、剣を後ろに投げ飛ばしてしまった。それが声の主の顔の真横を通って、聖堂の柱に突き刺さった。
「…………お、おおおお驚かせんなよ、ジャンヌ」
「あ、危ないじゃないですか!!私は剣を投げ飛ばしてくる貴方に驚きですよ!」
クールビューティ、ジャンヌが声を荒らげて、怒った。ナポレオンは不覚にもそんな彼女がちょっと可愛いと思ってしまった。
(……って、いやいやいや!何考えてんだ俺は!)
「ちょっと、殿下?聞いてますか?」
「あ、ああ!聞いてる聞いてる!悪かった!」
ジャンヌに声をかけられ、ナポレオンは我に返って彼女に手を合わせて謝った。いいですけど、とジャンヌが続ける。
「随分と熱心ですね、ナポレオン殿下」
「毎日やってるからな。……ん?ジャンヌ」
「何でしょう?」
「何で殿下って呼んでる?」
「殿下と気づいたからですけど…。殿下は公の場との雰囲気が随分違うのですね」
最初のコメントを投稿しよう!