第4話 シェリーという女

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第4話 シェリーという女

 ジャンヌのおかげでユーテルシア大陸にやってきたナポレオン一行は、とりあえず一番近くの街に行くことにした。マザーテレサがどの街、村にいるのか分からないので、その情報を探るためだ。  ナポレオンたちは森の中を道なりに進んでいく。すると、レオンが思い出したかのようにあ、と叫んだ。 「レオン、なんだよ?」 「ブリタン族も探らなきゃいけないよね?なら……」  そう言ってレオンは筆を取り出して鳥、蝶、犬といった動物を描き始めた。それを実態化するとすぐに呪文を唱えた。 「ファロス、インぺロッサ、スパトリアム」  すると、本物の動物だったのが虹色に輝いて透けた姿に変わった。 「さあ、(しもべ)さんたち、ブリタン族の情報を集めてきてくれるかな?ちょっとしたことでもなんでもいい。何か分かったら僕の元に戻ってくること。いいね?」  レオンが命じると、式神の姿に変わった動物たちは散り散りになって飛んでいった。 「よーし、ブリタン族の方は僕の式神くんたちに任せておけば大丈夫だから、僕たちはマザーテレサのことだけ探ろう」 「あ、ああ。そうだな」  呑気(のんき)でマイペースで面倒臭がり屋のレオンだが、こういう時に頭が回り、率先してやってくれるのが彼のすごい所だとナポレオンは思った。  それからしばらく歩くと街が見えてきた。  街の入口には「ヒュラト街」と街の名前の看板が立てられていた。そのまま進んでいくと、酒場や宿泊所が立ち並び、賑やかで騒がしい声が聞こえてきた。  少し街を散策すると酒場と宿泊所、武器屋など、冒険家が必要とするものやくつろげる施設が数多くあった。おそらくこの街は冒険家たちの中継地、といったところだろう。  ナポレオンたちは街にある酒場のひとつに入店した。中に入ると、楽しげな音楽が流れ、酔っ払いたちが下手くそな歌を歌ったり、踊ったりしていた。また、大声で自慢話をして笑い合っている人もいる。  店に入って立ち尽くしているナポレオンたちを見つけて、店員が声をかけてきてカウンターに近いテーブル席に案内する。すると、ナポレオンたちへの視線がいくつも向けられた。その中の一人の男が彼らに近寄ってきた。 「へぇ、初めて見る顔だなぁ?冒険家かぁ?」 「ああ。色々知りたいことがあってな」 「ふーん。……いいぜ、教えてやるよ。ただし、一緒にいる姉ちゃんをかりてもいいなら、な?」
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