プロローグ2

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「セーラ様も?」 「ええ。私にできたのよ?貴女にだってできるわ。だって貴女は私の自慢の娘なのだから」  そう言って少女を励ましているとドアが二回ノックされた。 「お二方、準備は整いましたでしょうか?」 「ええ、直ぐそちらに行きます」  セーラはドア越しに返事をして、少女の背中を押した。 「ほら、しゃんとなさい」  少女は緊張しながらも、思い切ってドアを開けた。目の前には儀式の火へと続く百合の花が敷かれた道ができており、(こうべ)を垂れた村人たちが道の両端に整列していた。  少女はその厳かな雰囲気に圧倒されながらも、背筋を伸ばし、真っ直ぐ前を見て進んでいく。その後ろには村長に補佐してもらいながら歩くセーラが続く。  二人の聖女が火柱のもとへ辿り着くと、村人たちがその前に整列し、手を合わせてその中心に居る少女とそのすぐ横に座るセーラに祈りを捧げる。 「聖女様、新たなる聖女様。貴女様はこの村の神の使いに等しいお方。貴女様の血、体、声、存在は神に同じであります。どうか我らに祝福と幸福をお与えくださいまし。我が村にあります宝玉をお守りくださいまし」  二人は村人たちに一礼をする。そして、セーラが手を挙げると、村人の一人が彼女のもとに冠と光り輝く玉を持ってきた。セーラは少女にかかるベールを上げ、冠を持ち、言った。 「次代の聖女よ。汝は私が認め、選んだ宝玉の守り手。私に代わり、宝玉とこの村を守ることを神の名のもとに命ずる」  彼女は冠を少女の頭に乗せ、玉を手渡した。そして、少女は誓いの言葉を述べる。 「宝玉と村を守ることを神と聖女様に誓います。かつての聖女様方に恥じぬ働きを致します」  それを聞き、村人たちは再び祈りを捧げる。 「新たなる聖女様の誕生を祝して、我らは聖女_テレサ様に従える(しもべ)となることを神と先代の聖女様方に誓います。どうか我らにたくさんの祝福と幸福が訪れますように、アーメン」  翌日、聖女_セーラは静かに息を引き取った。  それから五十年、少女だった聖女_テレサは今もなお宝玉を守り続けている。
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