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突然の国王の登場にナポレオンは動揺を隠せず、笑顔を引き攣らせている。そんな彼をよそにルイ十四世は朗らかに笑った。
「はっはっはっ!なーに、久しぶりに私自ら赴き、君を勧誘しようと思ってな!」
「は、はぁ……」
「だが!」と急に声を低くしてナポレオンをまっすぐ見つめて微笑んだ。
「無駄足だったようだ」
ナポレオンはルイの言葉に一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑みを浮かべ、膝をついた。
「感謝致します、陛下」
「よいのだ、顔を上げたまえ。さて、ナポレオン、我が弟への伝言とやらを聞こうではないか」
「いえ、陛下にそんなことさせる訳にはいきません」
「いいから言ってみろ。いつ聞いても君たち親子のやり取りは面白い!一度でいいから私がカルロに君の伝言を伝えてみたくてな!はっはっはっ!」
ルイはそう言うと、周りの従者たちはあわあわと慌てて彼を止めている。陛下本人は周りになんと言われようが全く気にせず話を進めるつもりでいるので、無意味なのだが。そんな陛下を前にして、ナポレオンはクスッと笑う。
「では、陛下。父に『晴れて成人になりましたので、夢を叶えるべく国を出ます。今までありがとうございました。追伸、絶対に勇者になって帰ってきてやるから、待ってろクソ親父!!』とお伝え下さい」
ルイは少し驚いた顔をして、ナポレオンに問う。
「もうアラヴェスタを出るのか?」
「はい、陛下も存じている通り、もう決めていましたから。母や兄、弟達にはもう伝えてあります」
「そうか。一人で行くのか?」
「いえ、一人、今日ここで待ち合わせしていて…。もうそろそろ来ると思うんですが……ん?」
その時、空で何かが光った気がした。と思った直後、ドカーンっとナポレオンたちの真横になにか落ちてきた。
「いっててててて。着地失敗したぁ」
そこには腰の辺りまで長く伸びた銀髪に、深緑色のロングコートに茶色のズボン、薄茶色の鞄を腰に巻いた細目の青年がいた。立ち上がって服に付いた砂やゴミを払った。ナポレオンは彼を見て、呼んだ。
「レオン?」
「あ、なっくん。やっほー」
「お前、その呼び方どうにかしてくれよ。恥ずかしいだろ。てか、何で空から降ってくるんだよ?」
「えー、だって、なっくんはなっくんだし。あー、それは転送か飛行かで迷ってたらいつの間にかグリフォン描いてて実体化してた、てへっ」
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